皆さん、こんにちは。いつも大変お世話になっております。今回は、大変有意義な桔梗の会に参加させていただきありがとうございました。私の体験と感想をまとめてご報告させていただきます。

 今回この企画を担当してくださったやすこさんは、明るく爽やかで、想像以上に素敵な方でした。そして、食べきれないほどのお茶菓子と貴重な資料を頂くことができました。その中には、呼吸器疾患患者の理学療法や最新の全国医療機関別気胸治療の実績一覧があり、日常生活での肺への配慮の仕方や旅行・緊急・セカンドオピニオン時に大変役立つ資料でした。

食欲とおしゃべりが止まらない

 千葉の松戸は、少々遠いという印象でしたが、意外と交通の便がよく、東京から乗り換えも少なく到着することができました。皆さん同様かと思われますが、私は、いつ気胸になるのかわからないために、直前まで予定が立てられずに、急に行けなくなっては申し訳ないと参加を躊躇していました。そんな時、「この桔梗の会は患者会ですのでご無理なさらずに体調等でのドタキャンもよいですよ。」と優しくお声を掛けていただき、人見知りの私はホッとして大変うれしかったです。

 交流会では10人の方が集まりました。お一人は、体調が悪く付き添いのお姉さまでした。こういった患者の集いには、ご家族の理解と協力が必要と痛感しました。自己紹介シートをもとに皆さんの体験や悩みなどを順々にお聞きし、どの方の思いも納得でき共感することができました。緊張感は、いつのまにかどこかへ行ってしまいました。

また、経験者ならではの具体的・実践的なアドバイス等もあり、日常生活の上で大変参考になることがありました。たとえば、飛行機の乗り方、ビキニの着こなし方、医師とのコミュニケーションのとり方、肺に負担を与えない動作の工夫、不妊と気胸の並行治療の進め方例、海外の医療事情、青汁の正しい飲み方などです。お話は盛り上がり、お互いの共通点や違いについても活発な意見交換がされました。試してきたホルモン療法の副作用と効果や術式の違いからくる再発とその後、症状に対する対処療法、さらには脱気痕や手術の傷の数を見せたり、数えたりまでしてしまいました。

本音トーク2

 それぞれ皆さん、手術の経験や術式など経過はさまざまでしたが、抱えている問題にはいくつも共通点がありました。一つは、今後の予定、生活設計に不安があるということです。今日元気でも明日は元気かわからない、一か月のうち体調良好だと感じるのは1/4くらい、違和感があると心配で動けない、そのため体力低下や心身に及ぼす影響が出てきているということ

そしてもう一つは、今まで苦しみ悩みながらもそれぞれで調べてきた情報量の多さです。でも、確かな答えが見つけられずに謎ばかり。今日、ここへ解決のヒントを求めて参加されたことと思います。多くの方から出された生の体験談やさまざまな情報は、大変貴重で自分なりに少しこの病気との付き合い方が整理できた感じがしました。また、今までのもやもやが、ストンと落ちた気がしたとおっしゃられていた方もいました。

発症時にストレスとの関係性が高いということや、医療関係者をはじめお仕事やご自分の役割に責任感をしっかり持っている方が多いことを自己紹介シートから感じました。そして、手術やホルモン療法を経験されてきた今も、いまだ大きなストレスと向き合わざるを得ない状況が続いている現状があるようです。

例えば、症状があり不安であるからこそ、何度もレントゲンを撮り、被ばくしているのに医療者側にその思いを理解されないと、かえって病院に行きづらくなります。そんな思いをするならと痛みへの対処療法を自分で探し工夫をしながら試しているのです。私たち患者は、不安だから少しでも安心をしたいから、すがる思いで医療にかかるのにその医療者の言動で一喜一憂し、ときに傷つき、心を閉ざしてしまうのです。

 稀少疾患だからこそ、医療側も対応に迷うのは仕方のないことと思います。患者も医療関係者も同じ人間ですから、ご家族がいて守るべきものがあり、疲れることもあるし、面倒くさくなることも、守りに入ることも当然あると思います。だから、個人を責めたりはしたくありません。完璧な人間は、どこにもいないことを私は嫌というほど身に染みて感じ、周囲に助けてもらい生きてこられたからです。

研究も進んでいない今、私たちは100点満点の回答を求めてはいなかったのです。一緒に考えてほしかったのです。気持ちを受け止めてほしかったのです。レントゲンの写真だけでなく、患者一人ひとりの心と向き合って寄り添ってもらえる場所がほしかったのです。

 栗原正利先生は、私たちのことを全面的にご支援してくださり、患者の心も支える医療を目指すとおっしゃってくださったそうです。それは、呼吸器外科の道を極め、更なる医療の発展のためにその枠組みから踏み出してくださるという意志の表れであるのだと今さらながら先生の志に深く感動いたしました。本当のプロというのは、いつまでもあぐらをかくことなく追求し続け、新たな道を切り拓いていくために努力を惜しまないものと思っております。私は、栗原先生を心から尊敬いたしております。

  しかし、最も症例研究されている栗原正利先生に執刀していただいた方でさえも3割の確率で再発を免れないという現状と、術後にも症状が残る方がいるということ。その発症原因が不明であること。閉経しても完治は難しい、この病気にはこれが効くという特効薬がないことを考えると、今後もさらなる研究の必要性を感じせざるを得ません。それには、今まで以上に研究体制を整備し、様々な方面からのバックアップが必要になるのかと思います。

 外科的に「気胸」をここまで研究するということは、大変珍しいことではないでしょうか。素人の意見ですが儲からないように思えるからです。でもあえて「気胸」を専門に研究されている栗原先生はじめ研究グループの先生方や玉川病院にこんなに助けられている多くの仲間たちがいます。今、私たちの仲間は、すでに外科的ステージから、次のステージへと移行し、QOLを高めつつ、より自分らしい生き方を模索して悩んでいる方の多くが息詰まりを感じているように思います。どこへ行ったらよいのか、まだ頑張っていいのかさえもわからないのです。この病気の専門家がいないということは、どのように個々の患者へ手を差し伸べ、道案内ができるのか見通しも方法も選択肢もいまだに統一された見解がされていないということです。 

  私たちには、呼吸器もあれば循環器もあり消化器もございます。女性特有の機能や個人の性質もあり、それぞれのパーツがばらばらに機能して生きているわけではありません。人としての心を脳がつかさどり、あらゆる環境の中でも心身の調和をとれるように、そして日々の生活をより豊かにできるために、体のあちらこちらと心がバランスをとりながら生きているのだと思います。どこか一か所が破たんすれば、もちろんその影響は他にも出てきます。

 これからは、様々な病気について各診療科目や身体パーツをばらばらに診ていくのではなく、全人的な診断と治療の研究が進むことが望ましいと思いました。それは、この病気で「気胸」という病態を発症している間は、「呼吸器内科」と「呼吸器外科」分野です。しかし、それよりも以前に体内で起きているホルモン周期にかかわる何らかの現象の異常については「婦人科」分野であり、ストレスや精神的なダメージが大きかった方には「心療内科」や「カウンセラー」も必要となってきます。それぞれのステージにいる患者に沿った治療・療養・再発予防のために、どこを頼っていけばよいのか、ナビゲーターが必要です。 皆さんのお話から今後ご結婚や妊娠を希望されていらっしゃる方もたくさんいますから、「婦人科」との関わりは絶対に切り離せないものとなっています。ですが、それぞれでの治療方針が違ってきますと、患者は何を信じてよいか混乱してしまいます。現状は、個人がそれぞれでさまよい納得がいく治療方法を求め、それだけで疲れています。これは、医療だけの連携ではなく、福祉・行政・教育といった分野との連携も必要といえると思います。

例えば、高額な治療費を費やしても再発を繰り返し、健康であることという条件のために就労できない方や多額な不妊治療のために身体だけでなく経済的にも危機状況にいる方がいます。そして、個々が精神的に追い詰められていく負の連鎖が社会にとってよい影響を与えるとは考えられません。

このように支援が必要な人に包括的な支援が届くためには、当事者の声を反映させた社会の枠組みの再構成とたくさんのコミュニテイが必要に思います。誰がいつ病気になっても助け合える、どこかで必ず社会とのつながりを持ち、お互い様が当たり前の社会になることが多くの人々を助けられるのだと思います。この暖かい患者会を通じて、そのような考えを持つようになりました。

3時間というノンストップの長時間の交流会だったのですが、皆さんあっという間に過ぎてしまったという感想をお持ちになられたようです。私も、もっと皆様とお話をしたかったので、自己紹介シートを振り返りました。このシートの利用は、情報整理をする上でとても意味があり、貴重な財産であると思います。

今後もこの財産を増やし、あちらこちらで連携と発信をされていくことで声を出せないで苦しむ世界中の人たちを助けていくことができるのではないかとこの会の活動に大きな期待を持っております。

 

夏のイベントには、たくさんの方のご参加と活発な意見交換や楽しい交流の場となりますよう祈っております。私もまた何か協力させていただけることがあればさせていただきたいと思います。

 

今回、このような素晴らしい企画とご準備をしてくださったやすこさんはじめ「桔梗」の会員の皆様、貴重な研究資料をご提供くださった栗原先生と片岡先生、本当にありがとうございました。花子より